コンパニオン診断薬からパーソナルゲノム医療へ
製薬業界ではいま、コンパニオン診断薬が注目されているようだ。
コンパニオン診断薬とは、
治療をうける患者さんにたいして、薬の効果は期待したとおりあるのか、副作用はでないのかをあらかじめ予測するために用いる体外診断薬のことである。
なぜ注目されているのか?
それは新しく開発する薬のほとんどが、病気に大きく影響している分子を標的とする薬であり、その標的分子の有無を投与前に診断する必要があるからだ。
つまり薬が効きそうな患者さんにだけ、薬を投与する個別化医療を可能にする試みになる。
2011年7月米国食品医薬品局(FDA)が、コンパニオン診断薬のドラフトガイダンスを発表した。FDAはこのガイダンスで、新しく開発する薬はコンパニオン診断薬を含めて承認を受けることを推奨している。
日本でも新規薬剤とコンパニオン診断薬を同時に承認したものとして、
①パニツムマブ(商品名:ベクティビックス) 抗EGFRモノクローナル抗体
②ゲフィチニブ(商品名:イレッサ) EGFR TK阻害剤
③モガムリズマブ(商品名:ポテリジオ) 抗CCR4モノクローナル抗体
④クリゾチニブ(商品名:ザーコリ) ALK TK阻害剤
が挙げられる。
コンパニオン診断薬は画期的なアイデアのように思われるが、
診断薬(陽性)と治療効果に相関関係がなかったり、診断薬(陰性)でも薬の効果があったりと問題点も指摘されている。(これは1つの分子だけで病気が発症しているわけではなく、病気の発症にはさまざまな遺伝子やたんぱくが関連していることが影響しているのではないか。)
しかも新薬と1:1の診断薬を開発するには膨大なコストがかかり、結局それが新薬の価格上昇、ひいては国民医療費の増大につながることが心配される。
そこで理想論的ではあるが、
薬ごとにコンパニオン診断薬を開発するという非効率なことを目指すのではなく、治療をうける患者さんのすべてのDNA配列(パーソナルゲノム解析)をしらべて、薬の効き方を解析するほうがよいのではないだろうか。
参考
そうすれば標的分子が発現しているのに薬が効かなかったり、標的分子が発現していないのに薬が効いたりしたときに、どの遺伝子やたんぱくがそのことに関与しているのか解析も容易に可能になるのではないだろうか。
また別の新薬を開発するときにも、一度解析しているパーソナルゲノム情報は有効に使用できるはずだ。
さらにDNA配列をしらべる人が多くなれば、DNAシークエンサーの急速な進歩につながり、個人の全DNA配列を決定する価格も想像以上に安くなることが期待できるだろう。
そんなことを医療の末端から目指してみる・・