エピジェネティクス
エピジェネティクスとは、
『DNAの情報(塩基配列)は変わらないのに、細胞の性質が変化し、記憶・継承される』
という概念である。(エピゲノムと生命 太田邦史より)
一卵性双生児は顔は瓜二つで、性格もよく似ていることが多い。これは一卵性双生児は基本的に全く同じDNAを持っているからだ。
けれども、その後の成長過程でDNAが全く同じ一卵性双生児にも徐々に違いがでてくる。この違いを説明するのがエピジェネティクスという概念である。
この違いはDNAがメチル化されたり、DNAを折り畳んで収納しているヒストンがメチル化、アセチル化、リン酸化されたりすること(修飾)によって生じる。最近ではDNAを翻訳してできるtRNAも関与しているとされている。
そしてこの違いによって遺伝子の発現や細胞の性質を調節している。またこの違いは細胞が分裂するときにも記憶される。
例えるなら、遺伝情報の基になっているゲノムに服を着せているイメージだ。
服を着ることによってゲノムに新しい意味が生じる。中身がおなじでもスポーツウェアを来ているのか、スーツをきているのかで何をするのかや周囲の印象も変わってくる。
このようにゲノムに服を着せること(修飾)によって、同じゲノムを様々に使いこなせるようになり、複雑な生命の維持・管理が出来るようになっているのだ。
一卵性双生児とエピジェネティクス
生まれたばかりの一卵性双生児のDNAのメチル化を調べるとあまり違いはないが、年を経るごとにDNAメチル化の数や位置の差が拡大していく。
このエピジェネティクスの違いが、一卵性双生児において病気になるかどうかの差にもなっている。
例えば統合失調症とアルツハイマー病は、一卵性双生児であっても50%は片方しか発症しない。
このことは統合失調症とアルツハイマー病において、遺伝要因は約50%であり、残り50%はエピジェネティクスが関係した環境要因であることを意味している。
癌とエピジェネティクスの関係も注目されている。
例えば胃がんの場合、H.ピロリ菌によって癌抑制遺伝子がメチル化されてしまい、胃がんになりやすくなると考えられている。
今後このエピジェネティクスの分野の研究が進み、病気と環境の関連が解明されていくのではないだろうか。
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