病気のなりやすさ 〜遺伝要因と環境要因の関係
『わたし太りやすい(肥満になりやすい)んです、なんでなんですか?』
『わたし、毎年インフルエンザにかかってしまいます・・・なぜ?』
このような疑問、ありませんか?
体重が増えるかどうかは毎日の生活習慣(環境)が影響する。しかし、明らかに太りやすい人がいれば、食べても食べても太らない人もいる。
インフルエンザにかかるどうかは、インフルエンザウイルスが流行(環境)しているかどうかが重要である。インフルエンザウイルスが流行していなければ、そもそもインフルエンザにはかからない。
しかし、毎年インフルンザに2回(A型、B型)かかる人がいれば、生まれてから一度もインフルエンザにかかったことのない人がいるのも現実だ。
そんな疑問を少しでも解決するために、遺伝要因と環境要因の関係について考えてみたい。
◉まずは病気のなりやすさに、遺伝要因と環境要因がどれくらいの割合(遺伝率)で関係しているのかイメージしてみよう。
例えば『けが』はどうだろう。人それぞれ皮膚や骨の強さに差はあるが、転倒したり、打撲したり外的刺激がないとけがをすることはない。けがは環境要因の影響が大きい。
逆に『遺伝病』は、単一の遺伝子の異常が原因となって発症する病気なので、環境要因はほとんど影響しないか、あってもわずかだ。
上図のように、肥満などの『生活習慣病やがん』などは遺伝要因と環境要因がともに影響している。がんは家族性乳がんのように遺伝要因が大きい場合もあれば、アスベストによる悪性中皮腫のように環境要因が大きい場合もある。
インフルエンザ、結核、HIVなどの『感染症』は、ウイルスや菌に接触(感染経路が成立)しなければ感染することはないが、遺伝的に結核やHIVになりづらい人がいることが分かっているので、遺伝要因もそれなりに影響している。
【関連記事】
◉次に病気になるのかならないのかを、家(人の体)の設計図(遺伝情報)と地震(環境)に置き換えてイメージしてみよう。
家は設計図に基づいて建てられる。耐震基準をみたした設計図に基づいて正確に建てられていれば大きな地震がきても被害は生じない(病気にならない)。
しかし、設計図にミス(遺伝的異常)があり、家の強度が足らないと大きな地震がきたときに壊れてしまう(病気になってしまう)。設計図のミスが多いと震度3ぐらいの弱い地震でも家が壊れてしまう。(下図参照)
◉ 糖尿病になるのかならないのかを、糖尿病発症に影響する遺伝子(遺伝要因)と1日の糖質摂取量とで単純化してイメージしてみよう。
糖尿病になりやすい遺伝子の数(赤の数)が全くない0個から10個存在する場合と、1日の糖質摂取量が40g〜200gの場合で例えてみる。
1日の糖質摂取量が糖尿病になるのかどうか大きく影響するが、糖尿病になりやすい遺伝子が10個あると、40gのわずかの糖質でも糖尿病を発症してしまう。
逆に、糖尿病になりやすい遺伝子の数が少ないとかなり糖質を摂取しても糖尿病にならないが、200g以上の多量の糖質を摂取すると糖尿病になりやすい遺伝子が0個でも糖尿病になってしまう。
このように病気のなりやすさは、遺伝要因と環境要因が密接に関係している。
将来、それぞれの病気の遺伝要因と環境要因を正確に解明することができたら、
個人個人がそれぞれ遺伝的になりやすい病気を中心に予防することができるようになる。
また同じ診断名の病気であっても、その病気を引き起こす原因の違いが遺伝子レベルで明らかとなり、それらの違いに合わせた個別化医療(パーソナルゲノム医療)ができるようになる。
【関連記事】
《参考》