『パーソナルゲノム医療』時代のはじまり

個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した医療をする時代がすぐそこに

ゲノムは腸内マイクロバイオームに影響する

腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)が注目され始めています。

 

世界的に有名な英科学誌ネイチャーがマイクロバイオームの特集をしたり、国内ではNHK腸内フローラの特集を放映しました。

 

 

◉腸内マイクロバイオームが人の体に影響する

人の体は60兆個の細胞のみで自給自足しているのではなく、おおよそ500〜1000兆の腸内細菌とともに複雑なエコシステム(生態系)によって成り立っています。

 

例えば、乳幼児期にある抗生剤を使い、腸内マイクロバイオームのバランスが崩れると、その後喘息などのアレルギー疾患にかかりやすくなることが分かっています。

腸内細菌は食物を消化することで抗炎症物質などをつくり、免疫の調節にも関わっているのです。

 

また、肥満や糖尿病、うつ病などの精神疾患、がんなどのよくある病気にも腸内マイクロバイオームが深く関わっていることが明らかになりつつあります。

 

 

◉ゲノムが腸内マイクロバイオームの形成に影響する

腸内マイクロバイオームは食事や抗生剤などの環境要因によって影響を受けています。

では、腸内マイクロバイオームは遺伝要因によって影響されるのでしょうか?

 

遺伝要因が影響するかどうかを調べる方法として、一卵性双生児と二卵性双生児を比較する方法があります。

コーネル大学とキングス·カレッジ·ロンドン大学の共同研究で、500組の双子を調べたところ、ゲノムが腸内マイクロバイオームの形成に影響があったと報告しています。

 

さらに、コロラド大学のダン・フランクらは、炎症性腸疾患の発症リスクに関係するNOD2遺伝子が、腸内マイクロバイオームの形成に影響していることを明らかにしています。

 

 

これらのことから、ゲノムは腸内マイクロバイオームにも影響を与え、腸内マイクロバイオームとともに人の体を形成していくのではないかと考えられます。

 

そう考えると、ゲノムの影響で足りなくなる腸内の善玉菌や過剰になる悪玉菌を知り、それらの菌を増やしたり減らしたりする(マイクロバイオーム医療)という新しいアプローチによるパーソナルゲノム医療が可能になると思います。

 

 

 《参考》

The Gene-Microbe Link : Nature : Nature Publishing Group