「よくある病気」とゲノム
病気になるかどうかは遺伝子に刻まれたリスク因子の組み合わせと、
その病気を発症させる環境に出会うかどうかで決まる。
いずれにせよ、遺伝子が関与しない病気はない。
ゲノム解析技術の急速な進歩により、
きわめて遺伝性の高い稀少疾患の遺伝的リスク因子(決定因子)だけでなく、糖尿病などの生活習慣病や癌、心臓病や認知症など「よくある病気」の遺伝的リスク因子(危険因子)が徐々に発見されている。
「よくある病気」は単純に遺伝子だけでリスクは評価できないものの、それでも遺伝子の影響を強く受けている。
遺伝学者で国際ヒトゲノム・プロジェクトの代表もつとめたフランシス・S・コリンズ博士は、
①それぞれの病気に対し、特定の遺伝リスク因子と環境リスク因子が存在し、それらが急速に特定されつつある。
②これらの発見は治療法や予防法の開発に新しい可能性をあたえている。
③あなた自身がリスク因子を知っていれば、自分の生活習慣を調整することができるし、早期の、治療可能な段階で徴候に気づくことができる。
と断言している。
例として、2型糖尿病について考えてみよう。
親兄弟に2型糖尿病患者がいる人は、この病気を発症するリスクは平均より三倍高い。この病気に遺伝子が関係していることは明らかだ。
だが単一の遺伝子でこの病気の発症を説明することはできない。この病気へのなりやすさは、多数の遺伝子が影響し合って決めている(多遺伝子性)。
人それぞれ、遺伝子の組み合わせしだいで2型糖尿病のリスクが平均より高くなる場合も低なる場合もある。
遺伝的にリスクが高い人は、食生活をどんなにコントロールしても糖尿病になるかもしれない。
遺伝的リスクが中程度の人は、過食偏食や運動不足などの環境因子が一定の限界を超えたときにのみ糖尿病になるのかもしれない。
遺伝的リスクがひじょうに低いひとは、不健康な食生活を送っていても糖尿病にはならないかもしれない。
つまりは、わたしたちの受け継いだ遺伝子の組み合わせと生活している環境が、病気になるかどうかを決めているのだ。
(参考)
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