リンチ症候群 【ゲノムで知る病気のリスク第4回】
あなたの家族(血縁者)に50歳未満で大腸がんになった人はいませんか?
大腸がんだけでなく、子宮内膜がん、卵巣がん、泌尿器系がん、胃がんなどを合併していませんか?
家族に大腸がん、子宮内膜がん、小腸がん、腎盂・尿管がんと診断された方が3名以上いる場合は、リンチ症候群が疑われます。
🔵リンチ症候群とは
リンチ症候群は常染色体優性遺伝(単一遺伝性疾患)で、
若くして大腸がんを発症し、それ以外の臓器でもがんを発症するのが特徴です。がんの平均発症年齢は43歳ー45歳と考えられています。
原因は、DNAミスマッチ修復遺伝子(MSH2、MLH1、MSH6、PMS1、PMS2)の病的変異です。
🔵リンチ症候群の頻度
全大腸がんの約2−5%程度がリンチ症候群によるものといわれており、頻度の高い遺伝性腫瘍の一つとされています。
リンチ症候群の人では約80%が生涯の間に大腸がんを発症し、また女性では約60ー70%が子宮内膜がんを発症すると報告されています。
🔵リンチ症候群の臨床診断
リンチ症候群が疑われる状況について遺伝性大腸癌診療ガイドラインに記載されています。その内容を解釈すると、
血縁者3名以上が大腸がん、子宮内膜がん、小腸がん、腎盂・尿管がんに罹患しており、かつ、以下のすべての条件に合致していること
①罹患者の1名は他の2名の第1度近親者(両親、兄弟、姉妹、子供)であること
②2世代にわたり罹患者がいること
③罹患者の1名は50歳未満で診断されていること
上記のリンチ症候群が疑われる状況を満たすようであれば、一度かかりつけの医療機関に受診することをおすすめします。
医療機関ではさらに詳しい問診があり、リンチ症候群が疑われる場合は、リンチ症候群の初期検査(MSI検査)をします。(3割負担での検査の自己負担額は6000円です。)
🔵リンチ症候群の遺伝子検査
初期検査の結果と家族歴をふまえて遺伝カウンセリングを実施します。
最終的にリンチ症候群と診断するための遺伝子検査をうけるかどうか判断することになります。
リンチ症候群と診断された方は、リンチ症候群によって発症リスクの高いがんを早期発見するための検診が推奨されています。
定期的に検診を受けることで生存期間が延びることが証明されています。
《リンチ症候群の遺伝カウンセリング実施医療機関》
②栃木県立がんセンター がん予防・遺伝カウンセリング外来
③埼玉県立がんセンター がん遺伝カウンセリング外来
④国立がんセンター中央病院 遺伝相談外来
⑤癌研有明病院 遺伝子診療センター外来
⑥慶応義塾大学病院 遺伝相談外来
⑦佐々木研究所付属杏雲堂病院 消化器科/外科
⑧信州大学医学部付属病院 遺伝子診療部
⑨京都大学医学部付属病院 遺伝子診療部
⑩国立病院機構 四国がんセンター 家族性腫瘍相談室
⑪国立病院機構 岩国医療センター 外科
リンチ症候群は、がんそのものには明確な特徴が少ないため、その多くが見逃されていることが指摘されています。
もしあなたの家族でがんになる人が多いなと感じたら、一度リンチ症候群を疑ってみてはいかがでしょうか?