『パーソナルゲノム医療』時代のはじまり

個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した医療をする時代がすぐそこに

『23andMe販売中止』の教訓

2013年夏、23andMeのサービスに感動して23andMeを日本でもひろめようと思っていた。

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23andMeの科学的根拠および遺伝情報の海外流出

 

2013年11月22日のニュースに驚愕した。

米国食品医薬品局(FDA)が「23andMe」に対して、遺伝子検査キットの販売を停止するよう警告したのだ。そして同年12月5日、23andMeは健康に関する遺伝子検査キットの新規販売を中止した。

 

そのころ私たちは23andMeの遺伝子検査キットをまとめて輸入するため、医務薬務課や税関に問い合わせをしていた。

そして日本でこの検査キットは『医療機器非該当である』との解答を得たところだった。

 

ではFDAはいったい何を問題視したのだろうか。そこからわたしたちが学ぶことはあるのだろうか。

 

FDAの要請を放置した23andMe

23andMeとFDAは、2009年以来、14回以上の直接協議を行い、何百通を超えるEメールによる折衝を行い、医療機器としての承認を得ようと申請をしていた。FDAは追加の報告書を要請したが、23andMe側が必要な報告書を提出していなかった。

 

FDAは警告文の中で具体例を2つあげて、医療機器として承認を受ける必要性について説明している。

 

❶検査の結果が病気に直接つながる遺伝的リスク因子(決定因子)における偽陽性偽陰性の問題(単一遺伝子による遺伝病の検査など)

偽陽性だった場合、必要もないのに侵襲的な検査や治療を受けたりする事例が起こりかねない。また偽陰性だった場合、実際にリスクが存在するにもかかわらず、安心してしまう人が出てくる。

 

❷薬の効き方についての自己判断

検査をうけた人が、厳密な管理を必要とする薬にたいして誤った判断をしてしまう可能性がある。『薬が効きにくいから大量に飲もう』や『薬が効きやすいから少しにしておこう』など、命に関わる危険がある。(参照:ゲノム薬理学〜あなたにふさわしいお薬を知ろう!

 

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 遺伝子検査は医療の分野を含む

『遺伝子検査でわかる運命の美容液』やダイエットに関連した『脂リスク型』などの体質をしらべるものは医療とはいえないかもしれない。

しかし生活習慣病や癌、アルツハイマー病などの遺伝的リスク(危険因子)の検査になると医療と関係してくる。ましてや単一遺伝子による遺伝性疾患(決定因子)の検査は医療そのものだ。

 

日本のベンチャー企業が23andMeのように大規模な遺伝子検査を直接消費者に提供するとき、医療に関わる検査項目もいくつかふくまれることになるだろう。

わたしたちはそのような検査を受けようとする人が安心して検査を受けられるように、そして検査結果を正しく判断できるように協力していきたい。

 

この遺伝子検査という新しい分野への挑戦にたいして、『23andMeの販売中止』の教訓を活かし、日本で同じような販売中止勧告厚生労働省から出ないようにしたい。(参考:パーソナルゲノム医療学会の設立