『パーソナルゲノム医療』時代のはじまり

個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した医療をする時代がすぐそこに

腸内フローラを活かして健康に

腸内フローラ(腸内細菌叢)が人の生命力、健康に大きく影響していることが分かってきています。

 

しかし、現代の生活習慣は腸内フローラに厳しい環境になっているのも事実です。

 

そこで藤田紘一郎先生の著書『人の命は腸が9割 ~大切な腸を病気から守る30の方法 (ワニブックスPLUS新書)』を参考に、腸内フローラを活かして健康になる方法について考えてみたいと思います。

 

 

 

◉腸内フローラとは?

腸内フローラとは腸の中に住む細菌たちの生態系のことを言います。

 

遺伝子解析の結果、腸内細菌は2万種類、1000兆個も腸内に生息しています。 

さらに腸内細菌の大部分は日和見(善玉菌が優勢だと良い働きをし、悪玉菌が優勢だと悪い働きをする)が占めており、次に多いのが悪玉菌で、善玉菌は最も少なく、腸内細菌全体の10%以下しか存在していないこともわかりました。

 

腸内フローラの大まかな構成は基本的に個人によって決まっていますが、善玉菌と悪玉菌がわずかに変動しています。

日和見菌はその変動によって、よい働きをしたり悪い働きをしたりします。

 

そのため数少ない善玉菌を助け、日和見菌によい働きをさせることが、腸内フローラを活かすことにつながります。

 

 

 

◉善玉菌を助ける方法

善玉菌を増やす方法として、生きた善玉菌を腸に届けるプロバイオティクスが注目されています。 

 

実は相性の合わない善玉菌は、免疫システムにより腸に定着することができず、3〜7日で便として排出されてしまいます。

しかし、便として排出される前に善玉菌が生成した物質は、あなたの腸内で生息している善玉菌のエサにとなり、あなた固有の善玉菌を助けることになります。

 

日本古来の発酵食品には、善玉菌である乳酸菌がたっぷり含まれているため、みそやしょうゆ、納豆などを食べることも大切です。

 

 《おすすめのプロバイオティクス》

 

 

 

 

 ◉悪玉菌をおとなしくさせる

悪玉菌は、体外から腸に入ってくる病原菌と真っ先に戦う(生存競争)役割をしており、腸に必要な菌です。

 

しかし、人の体に必要な栄養源である動物性の脂肪やたんぱく質をエサとして、硫化水素やアミンなどの毒素物質も作り出しています。

 

悪玉菌の毒素が腸内で大量に発生すると、善玉菌が著しく減少します。また悪玉菌の毒素は腸で炎症を引き起こし、動脈硬化(血管の老化)やがんなどの原因になります。

 

そこで重要なのが食物繊維です。

 

食物繊維は腸内細菌にとって最高のエサであり、食物繊維をとっていると悪玉菌だけが異常に増えるということはなく、腸内細菌のバランスが良くなります。

 

食物繊維は、実は悪玉菌にとっても最高のエサなのです。しかも、悪玉菌は食物繊維をエサにしていると毒素を発生しないことがわかっています。そのうえ、食物繊維をエサにしているとビタミン類もつくってくれます。

 

悪玉菌をおとなしくさせるためにも食物繊維をとりましょう。

 

 

 

食前キャベツ

食物繊維を簡単にとる方法として藤田紘一郎先生は、食前に小さなお皿に1杯分のキャベツ(100g:食物繊維2g)を推奨されています。

 

食物繊維が少ないと悪玉菌が優勢となり、ある日和見菌が増えます。その日和見菌というのが、『デブ菌』として注目されているフィルミクテス門の細菌です。

フィルミクテス門の細菌は、食事から効率的にエネルギーを回収して人に送るという特徴があります。

 

食物繊維によって、バクテロイデス門の細菌は短鎖脂肪酸をつくります。短鎖脂肪酸は大腸のエネルギーになりますが、体内に取り込まれると脂肪の燃焼を促進します。

 

痩せたい、肥満を解消したいのであれば、食事制限をするのではなく、食物繊維や発酵食品をとり、腸内フローラを活かす必要があります。

 

 

わたしも食前キャベツを始めました。あなたもいかがですが?

 

 

《参考》

 

 

 

 

ゲノムは腸内マイクロバイオームに影響する

腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)が注目され始めています。

 

世界的に有名な英科学誌ネイチャーがマイクロバイオームの特集をしたり、国内ではNHK腸内フローラの特集を放映しました。

 

 

◉腸内マイクロバイオームが人の体に影響する

人の体は60兆個の細胞のみで自給自足しているのではなく、おおよそ500〜1000兆の腸内細菌とともに複雑なエコシステム(生態系)によって成り立っています。

 

例えば、乳幼児期にある抗生剤を使い、腸内マイクロバイオームのバランスが崩れると、その後喘息などのアレルギー疾患にかかりやすくなることが分かっています。

腸内細菌は食物を消化することで抗炎症物質などをつくり、免疫の調節にも関わっているのです。

 

また、肥満や糖尿病、うつ病などの精神疾患、がんなどのよくある病気にも腸内マイクロバイオームが深く関わっていることが明らかになりつつあります。

 

 

◉ゲノムが腸内マイクロバイオームの形成に影響する

腸内マイクロバイオームは食事や抗生剤などの環境要因によって影響を受けています。

では、腸内マイクロバイオームは遺伝要因によって影響されるのでしょうか?

 

遺伝要因が影響するかどうかを調べる方法として、一卵性双生児と二卵性双生児を比較する方法があります。

コーネル大学とキングス·カレッジ·ロンドン大学の共同研究で、500組の双子を調べたところ、ゲノムが腸内マイクロバイオームの形成に影響があったと報告しています。

 

さらに、コロラド大学のダン・フランクらは、炎症性腸疾患の発症リスクに関係するNOD2遺伝子が、腸内マイクロバイオームの形成に影響していることを明らかにしています。

 

 

これらのことから、ゲノムは腸内マイクロバイオームにも影響を与え、腸内マイクロバイオームとともに人の体を形成していくのではないかと考えられます。

 

そう考えると、ゲノムの影響で足りなくなる腸内の善玉菌や過剰になる悪玉菌を知り、それらの菌を増やしたり減らしたりする(マイクロバイオーム医療)という新しいアプローチによるパーソナルゲノム医療が可能になると思います。

 

 

 《参考》

The Gene-Microbe Link : Nature : Nature Publishing Group

 

 

 

 

 

 

HealthData Lab  体験記No2

検体を提出して1ヶ月強、HealthData Labの検査結果が出ました。

 

マイページにログインすると、メニュー画像の下に

 

●あなたの遺伝子型の健康リスク

●あなたの遺伝子型の体質

●生活×改善 ポイントチェック

 

が表示されています。

 

メニュー画面

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◉健康リスク

健康リスクをクリックすると96件の健康に関するリスク項目が表示されます。

各項目をクリックすると、病気の説明、発症リスク、遺伝子情報、発生頻度情報の説明があります。

 

発症リスクでは、日本人平均の何倍のリスクがあるか分かります。また、データの信頼性を★の数(最高★★)で確認することが出来ます。

 

遺伝子情報は、検査&評価したSNP(一塩基多型)が説明されています。

心房細動を評価したSNPは rs2200733 でリスクは1.68倍でした。

  

【病気の説明】

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 【発症リスク】

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【遺伝子情報】

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【発生頻度情報】

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◉検査会社の比較(心房細動)

🔴 HealthData Lab

評価しているSNP : rs2200733 

私のリスク : 1.68倍

私の発生頻度(80歳) :  7.4% (4.4%×1.68倍)

🔴 23andMe 

評価しているSNP : rs2200733 / rs10033464

私のリスク : 1.73倍

私の発生頻度(0−79歳) :  46.9% 

 🔴 Mycode

評価しているSNP : rs2634073

私のリスク : 0.64倍

私の発生頻度 :  記載なし

 

 

心房細動のリスクは、HealthData Labと23andMeの結果はほぼ一致していましたが、Mycodeではリスクが低いと評価されていました。これは評価しているSNPの違いによります。

 

また発生頻度は、リスクが同程度のHealthData Labと23andMeで結果が大きく異なりました。これは評価している母集団の人種(日本人と欧米人)や環境が大きく異なるためと考えられます。

 

 

実際どの検査会社の結果が一番近いのでしょうか?

 

残念ながら現時点ではそれは分からないと思います。

今後検査をする方が増え、ゲノムビックデータが構築&解析されるようになると本当の結果が視えてきます。

(参考 パーソナルゲノム医療の実現にむけて 

 

 

ビットコインで創るパーソナルゲノム医療

パーソナルゲノム医療の普及を目指す中でお会いした人から、

ビットコイン』というものを教えてもらいました。

 

ビットコインは、

管理する中央機関なるものは存在せず、インターネット利用者同士が直接やり取り(P2Pネットワーク)し、ビットコインの全取引を検証し不正がないか確認していく(トラストレストラスト:信用なき信用)ことによって、決済ネットワークを維持しています。

 

ビットコインが普及すると、

お金のやり取り(決済)にかかるコストが劇的に減少し、経済活動が行いやすくなります。

 

 

インターネットによって、情報が寡占から大衆化されたように、

ビットコインによって、決済も寡占から大衆化すると確信しました。

 

 

今までお金のやり取りは銀行や証券会社を通じて行い、そこで発生する手数料のために、ある程度まとまった金額でないと、お金のやり取りができませんでした。

 

しかし、ビットコインで決済にかかるコストが激減すると、

 

『30円寄付しよう!』

『不特定多数の人から100円ずつ借りよう!』

 

というようなことが可能になります。

実際にBTCjamで少額の個人間融資が始まっているようです。

 

 

パーソナルゲノム医療が未来の医療システムを劇的に変化させるように、

ビットコインも未来の経済システムを劇的に良い方向に変化させると期待しています。

 

 

パーソナルゲノム医療の普及とビットコインの普及のために、

『少額寄付してもいいよ』

という方はサイドバーのビットコイン寄付より一度試しにお願い致します。

 

 

【追記】

ビットコインが貨幣として受け入れられるかどうか、

『21世紀の貨幣論』が参考になりました。 

 

マネーとは単なる信用ではない。譲渡することが可能な信用なのだ。 

21世紀の貨幣論より)

 

 

 

 

 

第3回パーソナルゲノム医療学会開催

 2015年1月10日ハイアットリージェンシー大阪で

『第3回パーソナルゲノム医療学会』を無事開催することが出来ました。

 

討論の内容は、

①2015年現在、様々な企業が遺伝子検査サービスを提供している。実際に遺伝子検査を体験し、それぞれの特徴を含めて情報発信し、遺伝子検査の普及に務める。

 

②講演会、メディアなどを通じて、まずは『パーソナルゲノム医療』という言葉の認知度を高める。その中でパーソナルゲノム医療の実現に協力してくれる方、企業を増やしていく。協力企業は学会ホームページで紹介する。

 

③2015年現在、遺伝子検査の臨床有用性が確立されている遺伝性疾患(単一遺伝子疾患・家族性腫瘍等)について、学会員での情報の共有、一般の方への情報提供を行っていく。

 

本年度もよりよい医療を未来にむけて実現していくために、

皆様のご意見・御指導よろしくお願い致します。

 

 

MODY 25歳未満発症の遺伝性糖尿病 【ゲノムで知る病気のリスク第3回】

学校検尿で尿糖を指摘されたことはありませんか?

やせ型であるにもかかわらず、若いときから糖尿病と診断される家系ではありませんか?

 

 

若年(通常25歳未満)で肥満がないのに糖尿病と診断され、親や兄弟も糖尿病の場合、

MODY(maturity-onset diabetes of the young)が疑われます。

 

 

🔵 MODYとは

MODYは常染色体優性遺伝(単一遺伝性疾患)で、

膵臓のβ細胞の機能不全によりインスリン分泌能が障害されるのが特徴です。

原因遺伝子は6種類同定されていますが、原因不明のものも存在しています。

 

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🔵 MODYの頻度

実際、学校検尿での尿糖が診断契機となった56名を含む、

79名の20歳未満の糖尿病の症例を調査したところ、MODY遺伝子の変異が38名、

約半数に認められたとのことです。(参考①より)

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 若年発症の糖尿病の原因として、MODYは稀な病気ではないのではないかと思います。

 

 

🔵 MODYの臨床診断 

1975年に TattersallとFajansらは以下のようにMODYを定義しました。

①25歳未満で糖尿病と診断

②3世代以上の糖尿病家族歴

③各世代において兄弟の約半数が糖尿病と診断

 

他にも下記であれば臨床的にMODYと診断する立場もあります。

①25歳未満で糖尿病と診断

②少なくとも親兄弟に25歳未満で糖尿病と診断された方が1名以上

 

 つまり若いときから糖尿病と診断されて、若いときに糖尿病と診断された家族がいる場合は、MODYと診断される可能性があります。

 

 

🔵 MODYの遺伝子検査 

MODY遺伝子検査は保険適応がなく、自費診療になります。(2015年2月現在)

 

医療機関で遺伝子検査を受ける場合は、本人と家族が遺伝子検査について正しく理解した上で検査に同意するという手順が必要です。

まずはかかりつけの糖尿病専門医に相談してみましょう。

 

MODY遺伝子検査を受けることによって、遺伝子の変異に合わせて的確な治療を受けられるようになります。

 

《MODY遺伝子検査実施医療機関》

京都大学医学部附属病院

東京女子医大病院附属遺伝子医療センター

 

 

 

パーソナルゲノム医療が実現し、

誰でも気軽に遺伝子検査を受け、その結果を簡単に医療に活かせるようになればと思います。

 

 

《参考》

①岩﨑直子ら:MODY原因遺伝子の現状と診断の進め方:医学のあゆみ,244巻12号,p.1030-1034

MODY - MyMed 医療電子教科書

 

 

【パーソナルゲノム医療への道 No3】 オバマ大統領、100万人の遺伝情報収集を目指す

1月30日、オバマ大統領はホワイトハウスで衝撃的な会見を行った。

 

2億1500万ドル(日本円で250億円相当)の資金を投じて、100万人以上の米国人のゲノム(遺伝情報)を集めると発表したのだ。

 

その目的はゲノムと病気の関連や、病気を引き起こす変異を標的にした新薬の開発などにあると説明している。

 

つまり、米国は本気でパーソナルゲノム医療を実現しようとしている。

 

 

米国が本気になるほど、この分野の技術の進歩は目覚ましく、すでにゲノム解析費用は1人あたり1000ドルに低下している。

次世代シークエンサーが実用化されれば、1人あたりのゲノム解析費用はさらに低下し、100ドル以下になるといわれている。

 

実は、医療の進歩のためなら自分のゲノムを提供してもよいと考える人たちが身近に、想像よりたくさんいる。

ゲノム解析費用が低下し、こうした人たちがボランティアとしてパーソナルゲノム医療の実現に協力できる環境が到来したとき、一気にパーソナルゲノム医療の基礎となるゲノムビックデータが構築できると確信している。

 

そして、ゲノムビックデータの解析がはじまり、本格的に臨床に応用されはじめるだろう。

 

ゲノムの解析をする人が、ボランティアから医療目的になるとき、

パーソナルゲノム医療が実現する。

 

 

米政府のこの発表は、

パーソナルゲノム医療を実現しようとしている人、パーソナルゲノム医療の実現を待っている人にとっては、素晴らしい出来事である。